島津将司
今日。沙耶を返した後、島津と助手はゆったりと話し合っていた。
助手が語る。
「今度の先生の作品は、かなり構成を変えられているようですね?」
島津は鷹揚にうなづいた。
「わかるか?」
「そうですね 今までのモデルと違う点が・・なんていうのかな・・」
島津は続けた。
「沙耶はMじゃないんだよ」
「え?」
「もちろんMの資質は持っている。が、Mになってしまうと単に【痛みと快楽】になる。今回、気を付けて沙耶には苦痛しか与えないようにしている。テーマが【耐える】だからね。タイトルは「赤い女」だ。なかなかいいだろう」
満足そうに島津が語る。
「先生・・それはすごく残酷なことでは・・?」
息をのむように助手。
「あの程度の責めを、らくらくこなすM女はたくさんいる。が、それでは今までと同じだ。まさか本当に見つかると思わなかったね。沙耶のような女がいるとは」
息を飲む助手。
「【赤の女】を描き終わったら沙耶をM女に調教しても面白いかもしれないね。
沙耶にご褒美として快楽も教えるとしようか」
この話を沙耶が聞いていれば、どれだけ屈辱と羞恥を感じるだろう。
助手でさえ沙耶を哀れに思った。
芸術への供物。
沙耶はそれに選ばれたのだった・・・