愛情
沙耶が、目をあけたとき島津は沙耶の顔を一心に見つめていた。
「先生・・・?」
沙耶は一筋の涙を流した。
「どうした?沙耶、痛いのか?」
「いえ・・最後に先生の顔を見たかったから・・」
「最後に? 沙耶、何を言ってる?」
聞きながら答えはわかっている気はした。
島津は画家として有名だが、そのためには心理学・哲学・ETCあらゆる分野の天才だった。
ヨーロッパでは「ミケランジェロの再来」とも呼ばれている・・
島津は沙耶が生きる気力を無くしていることを察した。
「沙耶 僕は沙耶を愛している。沙耶、僕を置いていかないでくれ 頼む」
島津の頬にも涙が流れていた
沙耶はびっくりしたように
「先生・・?」
「将司だ。将司と呼んでほしい」
「?せ、先生 ?」
「先生じゃない、将司だ。島津将司だ。沙耶を愛しているただの男だ」
「・・・?」
沙耶が戸惑うのも無理はない。
いくらでも時間をかけよう。
沙耶のためなら・・
「眠りなさい、沙耶には休養が必要だ」
優しく優しく、島津が言う。
その言葉に導かれるように、沙耶はもう一度眠りにおちていった。